今日も今日とて、とぜんでございます。

20代偏屈オタ男が日々とりとめないことを 書き留めるための随想録。 そしてそれは落書帳。 そしてそれはネタ帳。

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第5章:意外にも脳はやられていた。

8月13日、正午。博多はあいも変わらず晴天だ。

現代日本において健康で文化的な生活をぎりぎりで送っている
わたしたちはとりあえず昼飯のことを考えていた。
といっても結局ラーメンのことしか考えていなかったのだが、
それよりも前にまずタウン誌を買うことを忘れてはいけなかった。

旅が進むにつれ着実に疲労が蓄積していく一方で
旅に対する慣れを得て楽しむ技量が備わってきていた。
そんな疲弊と快楽の鬩ぎ合いの中で本来の目的を忘れそうになっていた。

駅構内の案内所で駅ビル内に本屋はないかと尋ねると、
あっさり向こう側にありますよ。と返答が返ってきた。
探すより聞く。時間のない旅行において、これは有用な手段だった。

空調の利いた、快適な駅の本屋で雑誌を物色する。

福岡新世代マガジン「NO!」&「天神WALKER」


ここまで本屋をめぐってくると要領を得るというか
選ぶのにさほど時間がかからなくなってきていた。
福岡新世代マガジン「NO!」、「天神WALKER」の二冊を
手に取り、足早にレジに持って行き会計を済ませる。

ところで雑誌の代金はすべて恰幅の彼と私の二人で折半である。
何事も言いだしっぺが第一に取り組み、責任を取らなければいけない。
この不変の法則をどうにかして打ち破る方法はないかと考えたのだが、
何かと心の奥深くで罪の意識に苛まれやすい、敬虔な子羊である
私はこの法則から逃れる術がないことをこの旅で悟りつつもあった。

「NO!」のほうは福岡の若者に向けた流行発信雑誌。
「天神WALKER」はご存じの方も多いだろうWALKERシリーズの天神版、観光案内雑誌だ。
天神は福岡駅から地下鉄で5分ほどいけるのだが、
福岡市内天神1丁目~5丁目を指し、九州一の繁華街だ。

とりあえず一番賑わっているところに出ようというわけだ。
今日中に鹿児島につくためにはあまりのんびりしている余裕はなかった。

そんなこんなで福岡市営地下鉄に乗車。
すぐさま天神へラーメンを求めて向かう。

なぜ天神WALKERを購入したのかというとラーメンマップがついていたからだ。
さっそく地図を広げてみる。地図がでかい、そしてその分天神も広い。
流石九州一の繁華街である。

そしてラーメン屋を探して歩く、歩く、歩いてまた歩く。
地下街に入り、歩く、歩く、歩く、ひたすら闊歩する。
おかしい。ラーメン屋がない。いやある。あるんだがみつからない。
地図と今いる場所があってるのかわからない…。
これは単純に言い換えると迷っている。

迷っているのになぜか皆に焦りがない。
いや焦るべきだ。そんなに時間の余裕はないのだ。
迷っていたのに地下街なぞに入ったせいで余計にわからなくなった。
とりあえずいったん出る。やっと目印を見つけ今いる場所と
地図上の場所が一致するようになった。

目ぼしいラーメン屋がある通りを目指す。
ミキサーの彼はこの手のことに強いはずであるし、
いつもなら文句をいって案内してくれるはずなのだが、
文句どころか何もいわずただ黙々と歩くだけ、
恰幅の彼はいつも通りに歩くだけ。

旅の疲れは着実に皆の脳に深刻なダメージを与えていることに気づいた。
福岡素人丸出しで地図をでかでかと広げながらラーメン屋を探す。

あった。しかし目的地のラーメン屋と違う上にとんでもない行列だ…。
それもそのはず一風堂の本店だ。これはすごい。
これに並んでいては大幅なロスだ。仕方なく断念。

もう一本ブロックを挟んだ通りに目的の店を発見した。

一心不乱看板


一心不乱の看板。なぜわたしたちの気持ちがわかる。
いやただの偶然だ。さっさと入り食券を購入しようとする。

このラーメン屋、かなり特殊である。
赤、黒、白、金と名前に色がついているのだ。
わからん。わからない。色と味のイメージが一致しない。
特に金はわからない。未知だ。

頭もいい具合に茹であがっていた私たちはあまり深く考えず、
黒と白のラーメンを注文した。若い店員のおねいさんが、
普通の麺と辛い麺、どちらがよろしいですかと尋ねてくる。
わからない。辛い麺?聞かれたことがない。

とりあえずビギナーだから私は普通の麺で注文した。ミキサーの彼も同乗。
恰幅の彼が「どんくらい辛いんですか?」と聞きなおす。
店員「かなり…です。」
恰幅の「じゃあ辛いので。」
何故なんだ。何故君はそんなに冒険したがる?

しばらくすると良い匂いと共に運ばれてきた。

一心不乱らーめん


私が注文したのは「白」であったが、ゴマとんこつである。
かなりゴマの香りが利いている。嫌いな味ではないがゴマは
少々飽きが来るのが早いので、個人的には純粋なとんこつの
「黒」にしておけばよかったかなぁとも思った。
それでもさして臭みもなく満足する味であった。

向い側で辛い麺を食っている恰幅の彼だが例の如く、
汗と水の消費量は半端がなかった。よほど辛いんだろうなと思い、
スープを一口もらったがスープ自体が辛くなっている。なかなかである。

辛いのは割と好きなのでこれはこれで良いとも思えた。
皆がいい具合に食が進んだところで時計に目をやると午後二時を指していた。
たかだか一軒のラーメン屋を探すのにかなりの時間を食ってしまった。

最初のプランでは18きっぷで鹿児島までJRで行こうと思っていたのだが
どうもこの時間になってしまっては無理そうだ。
簡易会議を行った結果、私鉄の肥薩おれんじ鉄道を使うことで意見が固まった。
多少旅費がかさむがそんなことをいってる場合ではない。
今日中に鹿児島につかなければ、おそらく中途半端な場所で下車を強いられる。
その結果まっているのは、地面のベッドで就寝すること、野宿だ。
夏だから死にはしないが、それではあまりに辛い。

なによりメガネの彼が絶望に打ちひしがれて、改札口で立ちすくむ姿を想像すると
私の目から、涙があふれ出そうになる。いや真っ赤なウソだが。

とにかく急がなくては。談笑もほどほどに御馳走様をさよなら代りに店を出た。
天神は人で賑わいを見せていた。人ごみをかき分け、地下鉄へ戻る。

また長い電車の旅がはじまる・・・。


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第4章:誇りを守るものを捨てよう

突然の更新。卒論提出終わったので書いてみます。


ヒトは衣服を発明した。それは寒さから身を守るため、
病気から身を守るため、快適な暮らしを得るためだった。
年月は過ぎ、人類は個性を表す手段としてまで
衣服の存在意義を高めていった。

九州で一泊を終え、8月13日の朝を迎えたわたしと恰幅の彼は
今、その尊厳を守るための衣服が激しく回転している
乾燥機の前でパンツ一丁で佇んでいる。
ミキサーの彼もメガネの彼もその姿はない。

博多コインランドリー


九州最大級の地方都市博多のコインランドリーという
文明の利器の中で至って原始的な格好で立っている。
わたしたちの尊厳を守るのはこの布きれ一枚だけだ。

なぜだろう。なぜこんなことになったのか。
それを説明するには時を遡らねばなるまい。

まず8月10日の旅の初日、京都の公衆浴場で体を洗いながら、
恰幅の彼とわたしはこんな会話をしていた。

「荷物とか重くしたくねぇから、ジーパンの変えとかないのだが。」

恰幅の彼は冷静に答える。
「それはぼくも同じだよ。でもこう考えればいい、一日一着ずつ
着替えるのを基準とすれば、下は一着しかないのだから、
この旅では一日七分の一ずつ使うことになるわけだ。
パンツもおなじ理論でいけば一日0.5パンツとかそんな計算だ。
だからたいしたことじゃないんだ。」

「なるほどそいつはすげー!お前天才だな(笑)。」

(笑)にはいろんな意味が含まれているとは思うのだが、
正直もう数学的なボケはつっこむの苦手だ。
なんとなく発想が凡人のそれとは逸脱していた。ある意味危険思想だ。
とりあえずボケにさらに乗っかることで称賛してしまった。

つまり衣服の限界を超えていたのである。
それがコインランドリーを探した一つの理由だ。

もうひとつ理由があった。それは昨晩のことである。
わたしたちはこの旅を卒業録音と題して
旅をしながらその過程を録音していた。
録音にはICレコーダーを使っていた。

レコーダーの管理はミキサーの彼に任せていたのだが、
博多駅に着いたとき、ある異変が起きていたのだ。
レコーダーの先端にあるはずのものがなかった。
マイクだ。マイクがなくなっていた。

正直この時はさしてそのことをあまり考えていなかった。
とりあえず九州上陸という達成感でどうでもよくなっていた。
その後遊び呆けて眠ってしまったわけなのだが、
やはりマイクは必要だ。当たり前だ。
そんな当たり前のことに朝気がついたのだ。

それで衣服を洗濯している間にミキサーの彼が
ヨドバシでマイクを買ってくるという並行ミッションがスタートしたのだった。

メガネの彼と言えば既に帰省して、鹿児島へ向けて
朝からさっさと一人出発してしまっている。
まさかメガネの彼もわたしたちがランドリーでパンツ一丁という
潔い格好で別の一日を始めているとは想像もしていないだろう。
何せ当人が想像していなかったのだから。

それにしても慣れると人はどこまでも落ちるということがわかる。
こうしていても正直さほど羞恥心がわかない。人として軸がぶれている。
ただ、パンツ一丁の男二人がぐるぐるまわる機械の前で
座っている姿は結構デスパレートであったとは思う。

とりあえずオイシイ状況であるとは思うので何か収録したのだが
もはや覚えていない。思いだしたくないのが半分本音である。

ぼけーっとしていると、ミキサーの彼が帰ってきた。
マイクは買えたらしいのだが、かなり高級なものしかなかったらしく
相当な出費であったと思う。

衣服も乾いた。この炎天下だというのに、擦り切れた薄手の群青色の
ジーンズはほっかほかである。この温もりはなんだか少し気持ちが悪い。
まあそれでも3日分の泥と汗の感触よりかは遙かにマシだろう。
まあ既に真っ当な感覚などわたしには残っていなかったのはさておく。
何はともあれ博多駅に戻ることとしよう。

当面の問題はこれで片付いた…と言いたいのだが
もうひとつ衣服の他にあるものが限界を超えていた。
背負っているタウン誌の重さである。もう耐えられる重量ではない。
雑誌を背負うのはこのくだらない企画を発案したわたしと
恰幅の彼というのがせめてもの筋の通し方だと思っていたので
二人で半分に分けて持っていたのだが都合2桁を超え出してから
肩への食い込み方が尋常ではなかった。

これをどうにかするために向かったのは郵便局である。

EXPACK


そう送ってしまうのだ。家に。エクスパックというのは専用のパックに
500円で入れられるだけ送ることができるすぐれたシステムだ。
写真で見るとそうでもないように思えるが、めちゃくちゃガチガチに
詰め込んでこれなので、やはり重かったと思う。

実際送り返してからのリュックの軽さといったら筆舌に尽くしがたい。
まるで羽が生えたよう、というのは言いすぎだが、とにかく肩が痛くない。
途中何度も捨てようと思った。捨てたらそれこそバッシングなので我慢した。
なんでこんなもんを背負って旅をしなきゃならんのか何度も自問自答した。
雑誌ではなくどうせなら業を背負いたいと
中途半端にうまいことを言おうとしたりもした。

それが全て報われた。
風来のシレンで倉庫の壺を見つけた感覚に似ている。

まあなにはともあれこれで殆どの問題が解決した。
後は次の電車に乗り遅れないように博多観光に洒落込むだけだ。
ここまで来るとだいぶ気が乗ってくる。パンツ一丁も悪くない。
人のプライドなんてのははずしてみれば案外安いもんだ。

色々なものを取っ払ってしまった4人改め、男3人一行は、
いよいよ旅の最終目的地鹿児島を目指すことになる。
とりあえずゴールはすぐそこまで来ていた。
鹿児島では先にメガネの彼が待っている。
その期待に応えなければならない。待っていろ鹿児島。


第3章:突然の別れ

なんだか突然の更新ですが、まだ続いています。月刊連載とでも思ってください。
なんとか完結に向けて合間を縫って執筆中です。



不夜城「レジャっぱ」で遊びつくして肉体的限界を超えた我々は
8月13日になったばかりの夜の博多をふらついていた。「レジャっぱ」から
博多駅までかなり距離があった。行きの目算では徒歩20分くらいだろうか。

「なんだよーたかが20分くらい大したことないだろう」と思う方もいるだろう。
確かに「普段」なら私だってそう思うのである。だがしかし、はっきりいって色々な意味で
限界を超えていたのだと思う。夏の猛暑の中、丸三日ほとんどまともに寝ずに
電車を乗継ぎ、歩き通してきたのである。もちろんすべて自業自得、覚悟の上での
旅行なのでその場で愚痴などはこぼしはしなかった。

しかし足は鉛のように上がらなくなっていたのは事実である。
おまけにボーリングをやったせいで心なしか腕もちょっと重い。
だんだん足の重みは疲労の蓄積により鈍い痛みに変わってくる。

そんな寝床を探す帰りの道すがら後ろから光がやってくる。
タクシーの前照灯が寂しい夜道を黄色く照らす。あっさり追い抜くかと思いきや、
手もあげていないのに私たちの目の前を急にゆっくりと走る。

どうやら運転手は私たちの後姿を見ただけで「こいつら疲弊してる」と察知したのである。
なんだか悲しくなると同時に絶対に乗らんという意地が胸に湧き上がってきた。
何故か他の3人も特に乗ろうと言い出さなかったのでそのまま歩いて帰ることになった。

だんだん街の明るさが近くなってきて見慣れた博多駅の姿が大きくなってきた。
妙な安堵感がある。駅前ではストリートミュージシャンが階段で気の利いたバラードを
熱唱していた。疲れていると音楽というものは胸にストンと響いてくるから不思議である。

漫画喫茶の看板が派手に光っている。なんでこの光がこんなに神々しく
慈悲に満ちあふれているように感じるのか、既に体の限界である。
エレベーターに飛び乗り上の階を目指す。ゆっくりと扉が開くと
ビルの蛍光灯が強烈に目を射す。光に慣れてあたりを見て目を疑った。
なんか人が並んで待ってる。

「はは、まさかねぇ。漫画喫茶ってそんなに混まんよね。」
「一時間待ちです。」
「は~わかりました。(この野郎!おれらの寝床を返せ!)」

仕方ないから駅を挟んで逆側の繁華街っぽい方の漫画喫茶を探すことにした。
幸いすんなり入れたが、座敷室とマッサージチェア室しか空いておらず、
ミキサーの彼と私は迷わず座敷を選んだ。恰幅の彼はマッサージでいいというので
その好意に甘えたのであった。分からない人に説明しておくと座敷型の部屋は
椅子はなくマットが敷いてあるので横になるのには打ってつけなのである。

ところでメガネの彼だか、彼は別室待機である。
彼は一足先に出身鹿児島へ向かわなければならないのである。
時刻表マスターの彼をここで失うというのは大変心苦しい。危険である。
しかし彼にも彼の事情があるので我儘を言うわけにはいかない。
勿論私たちも鹿児島は目指すのであとでメガネの彼と合流するからしばしの別れである。
明日はメガネの彼を除く3人で博多観光と洒落込む手筈である。

とにもかくにもまずはこの疲労を取り除かなければなるまい。
今日こそはゆっくりと眠ろうと決意した。そして明日はまた博多ラーメンを食べようと思う。
九州について最初の夜は更けようとしていた。
そして朝は色々とやらねばならないがありそうだ。

黒いマットに伏しながらそんなことを考えて眠りにつく。
次の朝が混沌に満ちた幕開けになることなど予想だもせずに。


第2章:疲れのその先へ

博多にて謎の一大アミューズメントパーク「レジャっぱ!」にて九州の初夜を迎えた
男四人一行。この先の計画も依然霞がかったままとりあえずこの不夜城で夜を越そうと
目論んだのであった。

大きなのを催していた私は濃い緑色のカベに囲まれている
アミューズメントっぽいトイレにて事なきを得て大人としての尊厳を守ることができた。

さて中の構造は前章で説明した通り、エントランスに入ってすぐ見えたのは
「サスケ」もどきとゲームコーナーである。ゲームコーナーと言っても要は
ゲームセンターと言って差し支えがない。ただ違うのは時間制であるから
コインを入れる必要はない。ただボタンを押すだけでいくらでも遊べるというわけだ。
上にボーリングレーンもあるようなので後で行こうとわいわいと盛り上がっていた。

そして特筆すべきなのはロデオマシーンだ。ジョーバとか最近ではあの手の
マシーンが流行っているがそういった健康器具のそれとは異なっている。
動きがやばい。激しすぎるのだ。事実振り落とされてもいいように
回りに黒い肉厚のマットがマシーンの中心から半径2メートルくらいに
渡って敷き詰められているのだ。動きに段階があるのかもしれないが
完全に制御不能になった馬の上に乗るのと大して変わらないと思う。

ここまでかなりの乳酸が体全体にたまっているのを感じた私は
別段乗る気も起きなかった。ぼーっと鉄の馬を眺めていると
若い地元民と思しきカップルがやってきて彼氏がおもむろに彼女を乗せて
その肢体を眺めて楽しんでいた。なんとなく嫉妬しながら微笑ましく眺めていた。
つくづく一般人とはかけ離れた思想のもとに足を進めている旅だなぁと
ふいに思い知らされた。10代の頃は私ももっと無邪気だったはずだろう。

このままだとお決まり通り物思いに耽ってちっとも楽しめないので
ストイックに音ゲーをやりにいった。中学の頃から音ゲーはやり続けてきた。
なので一般人から見たらだいたいキモイと言われるくらいのプレーはできる。

詳しく知らない人に説明すると、「ビートマニア」という名前くらいはご存じだろうか?
白と黒のボタンにスクラッチという回すギミックのついた筐体機である。
そして画面に映し出される上から流れてくる譜面とシーケンスに
合わせてボタンを押していくと音がなって曲が出来上がっていくというものだ。
他にもギター型やドラム型のものもあり色々な楽器をシミュレートすることができる。

口で説明するのは難しいので詳しく知りたい人は検索してほしい。
それをプレーしに行こうとしたら、恰幅の彼が見慣れぬ音ゲーをプレーしていた。
三味線シミュレーションだった。「太鼓の達人」があるのでまあ三味線もありかとも
思えるが、三味線は機械とかそういったものから最も程遠い楽器なので
その違和感といったらなかった。おまけにペチペチと音までするので
なんだか恰幅の彼がカラクリ人形のように見えて斬新な画であった。

負けじと「ドラムマニア」をプレイして一息ついた。
得てして男同士で遊びにいったりすると団体行動にはならず
何かスポーツをして遊ぶ以外はだいたい個人個人で遊ぶようになることが多い。
そういった例にもれず皆思い思いのゲームをプレーしていたようだった。

メガネの彼がスーファミから偉大な進化をとげたレースゲーム「F-ZERO」の筐体版を
やり終えたのをみなで見届けるとボーリングレーンに向かうために階段をかけあがった。


謎の施設は5階まであってレーンは最上階に位置していた。
外観から見てそんなに大きな建物には見えなかったのだがやはりデカイようだ。
階の途中にはサバゲーができるよう攻防が楽しそうなフィールドが用意されていたが
残念ながら明かりはついておらず、夜中は閉鎖されているようだった。
その閉鎖具合がなんだか雑居ビルの廃墟に見えて少し怖かった。

5階に辿り着くとガコーンというピンが倒れる小気味よい音がしている。
ピンクのネオンの光がカラフルな壁を一層派手に照らしていた。
なんだか知らないがこの施設はいちいちどことなく退廃的な雰囲気を醸している。

レーンをまじまじと眺めて思いつめた。中学からゲーセンに入り浸り
不埒な少年時代を過ごした私だったが、実はボーリングはほとんどやったことがなかった。
たぶん人生で2,3回くらいなのだ。そこいらの学生のイメージと変わらず遊び呆けていたが
なぜかボーリングに行く機会がほとんどなかった。そうこうしているうちに
大学生になっちまい、いよいよボーリングとほぼ関わらずに成人した。

そもそもボーリングに対するイメージは最低だった。それは小学生の頃の
軟弱な寂しき思い出に由来する。低学年の頃、私は初めてボーリングにつれていかれた。
背の順に並んで前から数えた方が早かった私にとって鉛のようなボーリング玉は
あまりに巨大で威圧感のある物体だった。

当時はジュニアレーンと言われるいわゆるガーターにならないような
生易しいレーンは存在していなかった。案の定、大きな玉は子供の小さな手から
零れ落ちて転がり暗黒へと続く溝へとすーっと吸い込まれていった。
ピンを倒すという至極単純なルールは小さかった私にも分かっていた。
一本も倒せなかったという事実は子供の安い自尊心を傷つけるには十分だったらしい。
泣きじゃくってボーリングなどしたくないとはっきりと断言した記憶が片隅にあった。

もともと運動神経も悪い私はその小さい頃の記憶が抜けていなかったこともあって、
できないと決めつけていた節があった。


そんな情けない事情もあってボーリングはほとんど初めてに近い状態でやることになった。
とりあえずシューズを借りて、適当にゲームを始めた。
ボールを持って見ると何ポンドの玉だか忘れたが流石にもう軽々持てる。

第一投はやはり明後日の方向へ。ガーター。そりゃそうだ。
いきなりうまく投げられれば苦労しない。だがめげない、しょげない。もう子供ではない。
友人のアドバイスを参考に重めの玉にしたり、投げ方を教えてもらううちに
ストライクとはいかないが、8本も倒せるようになった。といってもスコアは
糞みたいなもんだったが、あの頃とは違って楽しかった。

恰幅の彼はここでも珍事を起こしていた。彼が投げたあと必ずといっていいほど
スコアエラーを起こすのだ。何がいけないのかわからないがきっと「空海の水」を
あんな使い方をしたから罰が当たっているのだと思うことにした。

しかし今思い返してみるとよく三日目のほとんど眠っていない状態で
夜中に遊んでいたと思う。一種のサイヤ状態というか限界を超えると
割とどうにでもなるものなのだろう。

ボーリングを終えて帰り支度をする頃には既に日付は変わろうとしていた。
8月13日すなわち4日目に突入だ。
しかしそんな感慨実はどうでもいい。この「不夜城」まったく寝させる気がない。
鋼鉄のロデオがもう帰るのかと言わんばかりに見下ろしてくる。

寝床を探さなければ。できればちゃんと眠れる「漫画喫茶」がいい。
あるのだろうか。この時間から探すのは苦痛だ。
何よりまたあの長い帰り道を駅まで戻らねばならない。

最後に頼れるのは己の根性だけである。
振り返ると不夜城はまばゆい光を湛えていた。
「最初は疑ってすまなかった。」と思った。疲労の代わりに楽しい時間をくれた。

夜の帳に妙な寂しさを感じながら駅の方へつま先を向けた。


第2部:第1章:不夜城

八月十二日、午後六時三十八分、下関発、門司行きの電車は
その体をカタコトと揺らしながら男四人を運ぶ。ついに九州上陸だ。
私にとっては未踏の地だ。

車窓の風景は住宅地や工場を巡り巡って暗転した。トンネルに入ったようだ。
いよいよ九州だな、と周りに意気込みを訊ねてみるが、
さして盛り上がりはないようだ。
少々の長旅で少し疲れが皆にたまっているように見えた。
電車に日の光が一気に差し込んできた。
門司駅到着のアナウンスが澄んで聞こえてくる。

本州から九州上陸へ、その間はわずか七分ばかりのことであった。
門司駅は中継駅であり特に何も見当たらない。
辺りは夜の顔を見せつつあった。時計は七時を指している。
腕時計の日焼け後が出来たことに気づく。

門司駅から博多駅を目指す。博多に到着したとき
本当の意味での九州上陸だな、と思っていた。
門司博多間は鹿児島本線である。いよいよ九州での旅がここから始まる。
皆の元気も徐々に戻ってきていた。九州だ!ここは九州だ!と
当り前のことを、ただただ歓喜の声として口から漏らしていた。
門司から博多まではそう遠くはない。さっさと鹿児島本線に乗っかり、
約一時間余りで博多駅に到着した。

KC290038_博多看板


電車を降りると、博多ラーメンの看板が目に飛び込んできた。
駅の行先表示板に似せたその看板には「あつか」と「うまか」という
駅を指し示している洒落たペイントが施されている。いよいよやってきた。
博多駅はやはり大きい。九州の要だ。駅前も雑多な雰囲気を残しつつ
都会の姿を見せている。

KC290039_博多駅

KC290040_博多駅前通り


今日の寝床のことを考えて駅前をふらついていると、
赤い看板が目に飛び込んできた。ネットカフェ?漫画喫茶?
いずれの形態でもないその施設の名前が「レジャっぱ!」と
白抜きの文字で赤を下地に大きく書かれている。
その下にレジャー施設の種類が施設名と同じ調子で列挙されていた。
「ビリヤード、ダーツ、卓球、サッカー、ゲームセンター、サスケ、
ボーリング、ロデオ、ボールプール、サバゲー…サッカー…」。

とにかくものすごい数である。「サッカー」が二回書いてある。
間違いなのか、二か所あるのかわからない。
「サスケ」にいたっては表現上、問題が多々あるような気がしてならない。
サバイバルゲーム、通称「サバゲー」に加えて「ロデオ」もできるというのだ。

おかしい。普通の施設ではない。こんなヤバイ施設が
このあたりにあるのかということと、なんともこの怪しい雰囲気は
一瞬で我々の心を奪っていった。
「とりあえず後でここはいってみよう。気になって仕方がない。」
全会一致だ。

見慣れない土地を歩いているといつも以上に時間が
経つのは早いもので、はやいところ夕飯にありつく必要があった。
駅前の飲食店はそんなに遅くまではやっていない。
ホームにあった博多ラーメンの看板が目に焼き付いて離れなかった。

駅ビルをふらついていると最上階のフロアで首尾よく
まだ博多ラーメンの店が豚骨の匂いを散らしながら開店していた。
この匂いはたまらなかった。どんなに馨しいフレグランスの香りだろうと、
腹が減っているとこの匂いの誘惑に勝るものはない。
ライスと餃子のセットを頼み黒塗りのテーブルに着席して待つ。

この待っている時間もまた至福のときだ。匂いが近づいてきて
目の前に白い姿をしたラーメンがやってきた。
作る時の豚骨の鼻をつく匂いはしない。
出来上がったものは脂っこくなく上品なものである。

KC290041_博多ラーメン_新天地


関東での豚骨ラーメン、特にカップラーメンなどで販売されている類のものは
どれもかなり脂が強く濃いものが多いが、
本場ではそうではないということは知っていた。
やはりその情報は間違いではなかった。あっさりと食べることができた。
麺が細いので食べやすさも追求されているといった感じだ。

無事食事にありつけた一行は、ある場所まで戻ってきた。
あの謎の施設を示した赤い看板の前である。
場所を確認するために地図を見に来たのである。
どうにも大雑把な地図である。ホテルの通りを目印に行くということは
わかるのだが肝心のホテルがわからなかった。
とりあえずふらついてみるがウロウロするばかりだ。

落ち着いて見ると一本通りを間違えていたことがわかった。
分かってしまえばこっちのものである。
しかしどうもこの地図、縮尺がおかしい気がした。
地図上ではさほど駅から離れているようには見えないのだが、
通りを十分くらい歩いているうちに全体の半分くらいしか
来ていないことに気付いたのである。

「もしかして、結構遠いんじゃね?」
「だけど、もうここまで来ちまった、歩こうぜ。」
そんなやりとりをしているうちにどんどん道は暗くなり、
なんにもない路地へ入っていった。

「ここを曲がるのか?」
「ガソリンスタンドがあるんだから間違いない。」
辺りはかなり暗い。街灯という街灯もあまりない。
あのレジャーの種類からいって相当な施設だ、
という勝手な想像をしていた。それなのに辺りは住宅地と商業地の
狭間のエアポケットといった感じの場所だ。
こんなところにあの不夜城があるのだろうか。

「もしや、もう潰れたなんてこたぁないよな。」
「まさか、なら駅前にあんな看板出すわけないだろ。」
確かにそうだ。ここは九州の要、博多だ。
潰れた店の看板を掲げるほど情報に疎い街ではない。
目印の公園があった。やはりルートは間違っていない。
もうすぐ着くはずなのにその姿が見えない。不安だ。
だいたい足がもう石のように重い。
背負う「タウン誌」もギリギリと肩に食い込んでくる。
タクシーでも拾って引き返そうかと思ったとき、
目の前に赤い看板の明るい建物が見えてきた。

あれだ。あったのだ。不夜城は存在した。
しかし想像していたものとは少々違う。
分かる人には分かると思うが「らんらんらんど」のような姿をしている。
この建物の中にあれほどの施設が収容されているとは思えない。
エントランスは二階にあるという構造だ。階段を足早に上り、
入り込むと冷房の冷たい空気が体をなめていく。
蛍光灯とネオンの多種多様な光が合わさって室内は眩い限りだ。
確かに見た目よりも中は広い。奥にゲームコーナー。
真中にでかいロデオマシン。そして謎の「サスケ」のようなものが
第一ステージの四分の一くらいだけ用意されている。
素直に「アスレチック」にしておけばよかったんじゃないかと思う。

ギャルっぽい地元のバイトと思しきおねえちゃんたちが、
後ろの端末でとりあえず会員カードを作ってくださいというのでさっさと打ち込む。
冷や汗がだらだらと出てくる。
実は私はここに着くまでの間、大きいのを催していた。
腸があまり強くないのだ。はやく厠に行きたかった。
ほぼ限界である。足をばたつかせて個人情報をさっさと入力して
とりあえず二時間ばかり遊ぶことにした。

遊ぶのはさておきとりあえずトイレへ爆走した。
あと少し遅れていたら大惨事だ。ほっと息をついた。
しかしここじゃ眠れるはずがない。そもそも「サスケ」があるような
この施設に「眠る」という選択肢が存在するわけがない。
寝床は改めて別の場所を探すしかないなと便座に腰をかけながら思い悩む。
まあとりあえずせっかく来たんだから楽しむことにしよう。

九州初夜、博多での夜は簡単に朝を迎えさせることはないようだ。
望むところである。
気分もすっきりさせた私は不夜城に踊り出て行った。



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隼んver.2.1

Author:隼んver.2.1
性別:男
出身:北海道札幌市
現住所:神奈川県横浜市
血液型:不明(いい加減知りたい)
職業:小売・販売業
これまでの迷言:
おれ達は前を見ることしかできない。
好物:ラーメン(何味でもかまわんです。)

少年老い易く、学成り難し。
もう少年でもないので、
老いてゆかぬよう頑張ります。
おっさん老い難く、学成り易し。

リンクフリーでございます。


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