今日も今日とて、とぜんでございます。

20代偏屈オタ男が日々とりとめないことを 書き留めるための随想録。 そしてそれは落書帳。 そしてそれはネタ帳。

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第13章:海路

広島で平和について考え、旅のバカ騒ぎ的な
勢いを急激に失った私たちは平和記念資料館の
下の日陰にペタリとしおれて座っていた。

偶然にもボランティアガイドさんに会えたことに
未だ感慨を受けながら、低い目線から平和記念公園を仰ぎ見る。
ゆらゆらやさしく陽炎揺れる公園には
カップル、家族連れ、旅行団体など人々が楽しそうに歩いている。
平和というのは今この景色に佇んでいられることなんだろう。

一世紀の時を待たずここまで復興し、平和に暮らせる日本に
なったことを感謝しなくてはならない。
その犠牲を忘れてはならない。いつも思想的に難しいことを
考えていられるほど私は頭がよくはないし根気もない。
でもたまには振り返らなくちゃいけないことがある。
それを心に刻みつつ、よろよろと立ち上がった。


「広島ってあと何見に行く?」
「もみじ饅頭に安芸の宮島だ!」と勢い勇む私であった。
日本三景の一つ安芸の宮島はやはり外せない。

三時間余りに及ぶ平和公園記念公園ツアーを終え、
再び路面電車へと乗り込む。
広島電鉄線をのらりくらりと進むと宮島口が見えてくる。

メガネの彼に聞いてみると、
宮島口は結果的に広島から西に進むことになり、
しかも宮島口から宮島を結ぶ宮島連絡船は
18きっぷで乗ることのできる唯一の船だと言うのだ。
これはもう行かないのは無粋というもんである。

一向に夏の太陽は陰ることはない。
汗をハンドタオルで拭いながら連絡船口を探しうろうろと彷徨う。
時刻は午後十二時、二十五分。

KC290024_宮島口


目の前にあるではないか。直行便である。
海路を進むことになるとは考えていなかったので
俄然テンションを取り戻す。海はいい。
それにしても瀬戸内の景色は飽きない。
陸と海のコントラストがこれほどはっきりしている
景色を未だ見たことがなかった。

18きっぷをこれ見よがしに見せつけ乗船する。
気がつけば切符には三つ目の赤い刻印が刻まれていた。
中は涼しく快適だ。ゆっくりと船は旋回しながら
向きを変えていく。しばらくして船はスムーズに
瀬戸内の海原を走り出していった。

そそくさとミキサーの彼は外に出ていってしまった。
写真を撮りに行ったのだろう。リアルタイムでブログを
更新している彼がこのシャッターチャンスを逃すはずがない。
かくいう私もじっとしていられなくなってしまい、
デッキに出た。青白い太陽が瀬戸内海を照らす。

KC290025_宮島瀬戸内

KC290027_宮島瀬戸内03


横切る風が気持ちいい。眩しさを堪えて遠くに目をやると
白い海岸線に赤い鳥居が浮き出て見える。
もうすぐ着くぞ、というこの新しい目的地への到着というのは
何事にも代えがたい高揚感を齎してくれる。

乗船してる時間自体は短く十分程度である。
トントンと靴を鳴らし連絡船を降りていくとそこは絶景宮島である。
厳島はけっこう大きな島である。
一周しようと思ったらかなりの道のりとなる。
去年は伊豆大島を自転車で一周したのだが、
さすがにこの宮島は厳しいだろうなと
恰幅の彼と話しながら連絡船のポートを出ていく。

観光地独特の土産屋の立ち並ぶ明るい広場には
当たり前のようにある動物がうろちょろしている。

KC290028_宮島_鹿

KC290029_鹿とエサをあげる人

KC290034_ひもじい鹿


鹿だ。なんか鹿がいっぱいいる。どうやら野生の鹿だそうで、
「エサをあげないでください」と看板がある。
あげないどころかエサやりの権化みたいなおじさんが
思いっきり手なずけてエサをやっているじゃあないか。
これはいかに、と思いつつも奈良に行けなかったことが
不意に思い出されて、こんなかわいらしいバンビたちに
エサをあげんなという方が無理な話だなぁとなんとなく感じた。
どうでもいいが近くで見ると結構迫力がある。

時間は午後一時を回ろうとしている。腹が減った。
宮島をぷらぷらと散策して例のごとく食べ物屋を
探すことにした。それにしても暑い。そして肩が痛い。
私は中くらいのリュック一つで旅をこなしていた。
先にも述べたが衣類を削ってまで荷物は最小限にまとめた。
なのにめちゃめちゃ肩に食い込んでくる。
それもそのはずだ。旅を進めるごとに「タウン誌」を
購入するこの旅は徐々に荷物が重くなっていくという
ハンデを背負う旅なのだ。

家庭で引っ越しをする際、家電は重たいのはご存じのとおりだが、
CDや書籍といったものは量が増えてくるとかなりの
重量になるのだ。うちの学科の教授がレコードや本を収蔵しすぎて
床が抜けたという椿事を聞いたことがあるくらいである。

その観点から言って雑誌はかなりの凶器だ。
「もう雑誌を捨ててしまいたい。」と言うと
総出で「おい。」というツッコミが返ってくる。
これを捨てたら、この旅の意味がなくなる。

とりあえず養分が欲しい。この大量の雑誌を運ぶための
エネルギーを補充しなくては。
あたりをふらついていると、なにやら香しい匂いがする。

KC290030_牡蠣姿焼


そうだ、牡蠣だ!忘れていた。広島といえば牡蠣が有名だ。
これを食わずして広島を語ることなかれだ、と
急にテンションが上がり饒舌になった私はすかさず
白いランニングに白いタオルを捲いたいかにもな、
おっちゃんに「ひとつくださいな」と声をかけていた。

KC290031_牡蠣


やはり大きい。レモンを絞り、するっと口に運ぶ。
豊潤な海の香りだ。海を食ってる感じがする。
「いい旅夢気分」をやってるわけでもないのに余計な
コメントをしてしまう。その姿に触発されて
メガネとミキサーの彼も後でおれも食おうと息巻いている。

すっかり牡蠣の魅力にとりつかれた私は「牡蠣飯が食べたい!」と
猛烈アタックをして牡蠣飯のある料理屋に決定をした。

アナゴ飯も有名らしくそれをメガネとミキサーの彼は注文した。
向かいの恰幅の彼はカキフライカレーだそうだ。
ここでも彼のセンスは他の人と少しずれている。

KC290032_牡蠣飯


牡蠣飯である。葱と茸と牡蠣がこんもりとご飯の上に盛られ、
湯気と香りを強烈に放っている。説明はいるまい。
旨い。それだけである。丼ものの良さは男らしく
かきこんで食べられるところにある。
相変わらず恰幅の彼の水の消費は尋常ではない。
逐一地元の店員のお姉ちゃんを呼びつけ水をおかわりしている。
このままでは店がまたも干ばつの危機にさらされるので店を出た。

土産通りを抜けて海岸通りに出て厳島神社に向かうことした。
これは見ておかなければなるまい。道中「もみじ饅頭」を購入した。
私とミキサーの彼が傾倒している「水曜どうでしょう」に倣って、
後で早食い対決をするためのものだ。

流石に盆の時期ともあって厳島神社は観光客で溢れかえっている。
ところどころ鹿が混じっているので油断できない。

KC290033_宮島海岸沿い

KC290036_海岸と鳥居


海岸線を歩いているとその景色に佇んでしまった。
さすが日本三景に数えられるだけのことはある。
潮の具合によってもその表情を変えるのであろう。

のんびり佇んでいると、恰幅の彼の旅行バッグに
鹿が頭をぶつけている!こいつら狙っている。弱肉強食。
おちおち景色に和んでいる時間すら鹿は与えようとしないようだ。
エサやりじじいは何やっているんだと思いながら足を進める。

KC290035_厳島神社


坂を登っていくと観光写真でよく見る厳島神社の姿が
そこには広がっていた。白の砂と赤の神社による
紅白の景色が太陽に照らしだされて非常に美しい。
日本の島の風景だなーっと感じさせてくれる。

しかし暑い。南中高度がまだかなり高いこの時間帯に
じっとしていると危険である。とりあえず宮島で
やらなくてはならないことは押さえたので九州上陸を
果たすべく厳島を後にすることにした。
スポーツドリンクをがぶ飲みしながら連絡船に乗り込み、
名残惜しくも宮島に手を振る。

宮島口からは山陽本線に戻り新山口まで行き、
そこから本州の最西端「下関」を目指す。
いよいよ本州を離れるところまで近づいてきた。

電車内に乗り込むと勢いよく荷物を電車の荷台に乗っける。
この一連の行為のスムーズさで皆口を揃えて
「旅慣れてきたねぇ」と互いに褒めあう。虚しい。
だが、実際本当に旅慣れてきているとは思う。
移動がそんなに苦痛には感じられなくなっていた。

忘れることなくもみじ饅頭の箱を強引に開けると
クリーム、こしあん、抹茶など五種類の、計九個の
もみじ型の饅頭が飛び出した。これを二個ずつ分け与えて
早食い対決を行う。なぜ行うのかと疑問に思う方も
多々いらっしゃると思われるが、「面白そうだから」の
ただ一言でしか説明できない。浅はか過ぎる、という
叱咤激励にはもう慣れてしまった。

しかし味に偏りが出ると不公平なので
くじでまんじゅうを引いてそれで対決することにした。
全員がどういう組み合わせになったか覚えていないが、
メガネの彼がクリーム二個を引いたのは覚えている。
クリームはなんとなく食べやすそうだったので
メガネの彼が優位に思われた。

ミキサーの彼はICレコーダーを片手に収録を行いながら
食べることになるので不利にならぬようあらかじめ袋から
饅頭を取り出しておき、各々が片手で一つずつ
食べれるようスタンバイをした。

ルールとしては先に饅頭を二個食べ終え口の中から消えて、
三個目に手を出したものが勝者となるというものだ。
そのため口の中から消えたことを証明するために
「もみじ!」と叫ぶということにした。飲料の類の補給は
禁止事項である。もし破ればあの罰則ルールを適用し千円か
小指一本を飛ばすことになる。

皆に緊張が走る。一呼吸おいて、
私は「スタート!」と合図を出した。
一斉に皆が無音でもみじ饅頭を口に運ぶ。
なんと恰幅の彼は一度に二個食いである。
馬鹿め、二個食いは一見速そうだがその実遅いのだ。
メガネの彼とミキサーの彼だが、メガネの彼が
一足早く二個目に手を出している。
私はほぼメガネの彼と同時に二個目に手を出していた。
どうやらメガネの彼と私の一騎打ちである。
ひたすら飲み込める程度になるまで咀嚼する。顎が痛い。
そして甘い。旨い。

ほんの数秒の差で私は「もみじ!」と叫んだ。
車内に乗客がほとんどいないとはいえ、「もみじ!」と
叫ぶのは迷惑であったと叫んだ瞬間、恥ずかしく思った。
だいたい「もみじ!」とは意味不明である。気持ち悪い。

そしてもうひとつ阿呆をやらかしている。
全員もみじ饅頭を口に含んでしまっていてはいったい誰が実況を
するのだ!口にいれてから皆気づいたので時既に遅しであった。
どうしてこうも馬鹿なんだろうかと流石に思わずにはいられない。
恐らく収録されたのものを聞いてみるとしばらく無音の後
「もみじ!」という声が入っているだけに違いない。
使えるわけがない。

特に賞品も罰もないので勝っても負けても意味はない。
あるとすれば三個目はゆっくりと味わうことができることくらいだ。
恰幅の彼は策に溺れ結局ビリである。

早食い対決は尻すぼみに幕を閉じた。
電車内でのゲームやらトークやらは本当に
しょーもない下らないことばかりである。
それでも車内の移動時間を潰すには丁度良い。

気がつけば、下関である。

KC290037_下関土産屋


時刻は八月十二日、六時十四分である。
流石にもみじが腹にたまってふくは食べられそうにもない。
しばらく休憩を挟んだ後、下関から門司を結ぶトンネル、
関門トンネルを渡る。下関から門司行きの電車に乗り込むと
車内の電気が落ちた。何かの準備を行っているのだろうが
なぜ電気が消えるのかよくわからない。

とにもかくにもこのトンネルを抜ければ、そこは
目的地鹿児島のある九州だ。私は初めて足を踏み入れる。
思えばこの三日間色々あった。ありすぎてすぐには
思い出せないほどだ。「月日は百代の過客にして
行き交う年もまた旅人なり。」なんとなくそんな有名な
芭蕉のフレーズが頭によぎる。

九州にはいったい何が待っているのか、
不安と期待の入り混じる複雑な気持ちを抱き
打ち震えていると、不意に電車に明かりが戻った。
電力が戻ったようである。準備は整った。
ゆっくりと門司行きの電車は滑り出していった。

魅惑の九州へ、本土最南端、薩摩を目指す旅の始まりである。

                           (第一部完)


ここまでが第一部となります。
第一部だけで結局十三章になってしまいました。
もし読んでいただいた方がおりましたら、
本当にお疲れ様でした。そしてありがとうございます。

第二部、九州上陸編はとりあえず合間を縫って
執筆中でございますが、文体、テンション、展開おそらく
まったく変りなくだらだらと続きます。
引き続きお目汚し失礼いたします。

この旅行記思わぬ長さになってしまいましたので、
Wordにまとめながら書いていたのですが
どうやらこのブログではwordファイルを
アップロードすることができないようなので
txtファイルにとりあえずコピペして保存してあります。

とりあえず揚げておきますので、
クリックして読むのうざいなーという方はお試しください。
wordの方が断然読みやすいのでそれをアップロードできれば
良いのですが何かいい方法があればなぁと思います。

とぜん旅行記「西日本横断18きっぷの旅」

お付き合いいただいた方、重ね重ねお礼申し上げます。
それではでは。


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隼んver.2.1

Author:隼んver.2.1
性別:男
出身:北海道札幌市
現住所:神奈川県横浜市
血液型:不明(いい加減知りたい)
職業:小売・販売業
これまでの迷言:
おれ達は前を見ることしかできない。
好物:ラーメン(何味でもかまわんです。)

少年老い易く、学成り難し。
もう少年でもないので、
老いてゆかぬよう頑張ります。
おっさん老い難く、学成り易し。

リンクフリーでございます。


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